日本語教室で配慮するポイント・心得

日本語教室では、日本語のレッスンや文化体験が行なわれることが多いと思います。国際交流協会で働いた経験や様々な日本語教師の方のお話を基に、配慮すべきポイント・心得をまとめておきます。

Ⅰ:対学習者向け配慮

その1 - 「言いたくないことを言わせない」配慮

私が日本語教師として1番大事にしていることが、「言いたくないことを言わせない」ことです。

日本語を勉強している人に限らず、世の中には様々な背景を持つ人がいます。言いたくないことも、その人ごとに違います。

例えば、私はペットの話しは大好きで、細かい話しもします。でも、家族の話しはあまり好きではなく、曖昧にして話すことが多いです。一方で、子どもの誕生日や好きなもの、学校などを誰にでも伝えるタイプの方もいます。同じ日本人でも、何を言いたいかは人それぞれです。外国出身の方であれば、言いたい内容の差異は、もっと多様になるのではないでしょうか。そこを無理強いしてしまうと、「日本語で話したくない」「日本人と話したくない」という気持ちが生じてしまうので、注意が必要です。


また、恋人の有無、身体的な質問は、セクハラに当たる可能性もありますので、出来るだけ避けた方が良いでしょう。

日本語教室独特の質問かもしれませんが、住所を聞くのも止めた方が良いです。人によっては、その地域で1人の○○人かもしれません。まだ日本語がうまく使いこなせない人は、アパート名や部屋番号まで言ってしまうかもしれません。このような「個人を特定できてしまう情報」は、特に注意してください。


「自分は言いたいから、相手もきっとそうだ」ということはありません。そこは相手をよく観察して想像力をフルに活用し、どこまで聞いても良いかを考察することが大事だと思います。


他にも、日本語の練習をしていると、「言いたくないのか、言うことができないのか」判断に困ることがあります。その場合は、対象を変えてみてはいかがでしょうか。

例えば、家族について話す場合、自分の家族だと言いたくないこともあるでしょう。それを「好きな漫画の主人公家族」や「自分の家族になって欲しい有名人」を使ってみるのも良いと思います。そうやって対象を変えることで、同じ単語や言い回しを練習出来て、言いたくないことは言わずに済みますよね。


【配慮した方が良いテーマ(例)】

  • 家族

  • 恋愛(恋人の有無など)

  • 住所

  • 年齢

  • 政治・政治に関すること

  • 宗教

  • 身体に関すること


その2 - 「相手の国のことは相手に話してもらう」配慮

日本語教室で支援者をしている方の中には、長年外国に住んでいらっしゃった方や仕事で頻繁に外国と日本を行き来してい方がいらっしゃいます。もちろん、その際に見聞きした知識や経験、言語的な能力を活かすことは、全く問題ありません。一方で、「まるで全てを知っている」ように振る舞うのは、あまり良くないと思います。

例えば、「私は中国に10年住んでいた。中国は○○だ」と、中国出身者の前で決めつけて言う支援者がいます。しかし、中国はとても広い国ですし、支援者が住んでいた時期と今が一緒とは限りません。立場(国民か外国人か)が違えば、”見ることが出来る内容”も違ってきます。日本でも同じですよね。東京と大阪だけでもこれだけ違い、1つにまとめるのは至難の業ですから想像しやすいと思います。

もし何か言いたい時は、「私は中国で○○を見たが、今はどうだ?」「○○についてはどう思うか」など、相手が話しやすいように形を変えて見ると良いと思います。


その3 - 決めつけない配慮

その2とも重なる部分がありますが、ベテラン支援者の方でも「○○人はこうだ!」と決めつける方がいらっしゃいます。


私が聞いた中で1番ビックリした例を紹介します。発言をした支援者はかなりベテランの方です。あるイベントで、来日1か月くらいの学習者たちが参加することになりました。自転車でやってくるという事だったのですが、時間になっても来ません。その後、ベテラン支援者に10分ほど遅れると連絡がありました。すると、「あの国の人の10分は、最低20分。あこ(自宅)からここまで10分もかかるはずない。何をちんたらしてるんだろうね笑」と、その場にいる皆の前で言ったのです。確かに、日本人の時間の感覚と外国人のそれとは違うことが多いです。だからと言って、決めつける必要はないです。ましては、人前で笑いながら言う必要もありません。

「初めての日本で困っていないか?」「道に迷っていないか?」とまず思える支援者になりたいものです。



その4 - 文化体験での配慮

日本語教室や国際交流協会で、文化体験を企画することがあると思います。その際には、どのような事に配慮すれば良いでしょうか。

2つの視点でまとめたいと思います。


① 食べ物への配慮

例えば、宗教上食べることが出来ない食材は使わないなどが、分かりやすい例です。今はムスリムの方も増えており、これまで以上に注意する必要があると思います。日本人の感覚だと「少しくらいなら・・・」と思ってしまいますが、それは押しつけです。相手の立場を最重視すべきです。

同じように、アレルギーも多種多様になっています。「そんなアレルギーあるの?」と思うものも、食べることが出来ない人がいます。これも軽く考えていると、生死に関わることがありますので、十分に気をつけてください。



②性別への配慮

男女の交わりを嫌う人もいます。着付け体験などでは、男女が同室にならないような配慮が必要です。また、書道や茶道などでも、先生が密着したり体に触れたりする可能性がある場合も配慮が必要です。急に異性に手を触られて不快に思う人もいます。イベントの前に、手を触る・体が密着する可能性をお知らせしたり、男女両方の先生を呼んでそれぞれの性別を担当してもらうなどの対応をすると良いと思います。先生側にも、前もって事情を共有するとスムーズに行くのではないでしょうか。

日本人でも同じように思う人はいますので、セクハラ・パワハラのニュースをよく読んで勉強してみてください。



Ⅱ:支援者同士内での配慮

その1 - 学習者の個人情報への配慮

日本語教室では、学習者の方を自分の子どものように思って接していらっしゃる方もいらっしゃいます。学習者側も、「日本の親」のように支援者を慕っていることがあります。教室内では全く問題ないのですが、教室の外や支援者同士で会話する際は、注意が必要です。

例えば、「私の担当している○○さんはA国出身で、旦那さんは△△人で、今は××に住んでいる。もうすぐ出産で楽しみ」などと話す人がいます。個人情報がダダ漏れですね。何気ない会話に感じるかもしれませんが、このような内容を他の人には知られたくない、”担当の支援者だから”話している可能性もあります。もしこのように話してしまえば、支援者への信頼を裏切ることになりますので、絶対止めてください。先に書いたように、出身国によってはその地域で該当者が1人しかいない可能性があります。その場合も考えて、出来るだけ抽象化して話すようにした方が良いでしょう。

例:×マレーシア人 → ○東南アジア出身

×アメリカ人  → ○英語圏出身


その2 - 支援者同士の背景への配慮

学習者の背景も多様な日本語教室。支援者側も多様な背景を持っている人がいます。支援経験が長い人、日本語教師経験のある人、他国に精通している人、全く無い人、、、全ての人が様々な形で外国出身者を支援しています。そこに優劣はありません。

にも関わらず、「あの人は~」と言ってしまう人が少なからずいます。そうやって支援者の多様性を排除することは、多様な学習者への対応としてもマズいように思います。あくまでも、同じ目的を持った支援者同士として敬意を持って接して行くべきではないでしょうか。


その3 - 権利関係への配慮

日本語教室は無料で授業を提供しているとことも多いと思います。非営利組織であれば、著作権なども緩くなる場合があります。しかし、教材などの権利関係は、利用前に必ず確認してください。

このサイトでも紹介しているものにも、著作権について明記している部分があります。また、私が作成している無料ダウンロード日本語教材も、著作権については放棄していません。



まとめ

外国出身者を支援しようと思う人は、誰かの役に立ちたいと思っている方だと思います。そのような思いがある方なら、「相手に配慮する」こともきっと出来るはずです。

もちろん、人間ですからイラッとすることや気分が乗らない時もあると思います。しかし、それを口に出すかどうかは大きな差があります。そこは、大人としての振るまいが求められる部分だと思います。


人は、それぞれ思いや感じ方が違います。それは、人がそれぞれ見た目が違うのと同じようなものです。「自分がこう思うから、きっと彼らも・・・」ではなく、「自分はこう思うけど、彼らはどうだろう」と思いを巡らすのも、大事な支援活動ではないでしょうか。









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